読書はお好きですか?
梅雨らしいジメジメした天気のいい日。ふと思い返して、「自分にとって、本とは何だろう?」と考えてみました。
限られた1日の優先順位が「本」ではなくなった今、大人が本を読んで得られるものは、「心で感じる時間」でした。一杯のコーヒー代で買った、本の読書記録。
どちらかといえば、私は本が好きな子供でした。
朝が弱く目覚ましだけではまた寝てしまうので、いつも枕元に小説を置いていました。寝ぼけながら本を掴み、10分ほど本の世界に入り込む。一度読み切った本も何度も読み返してより深く一つの作品を知ろうとするのが楽しかったです。当時は漫画よりも、頭の中で自由に映像にできる小説が面白くて、毎月何冊も本を買っていたことを思い出します。
でも今の私は、「本を読まない人」。
大人になってからは、趣味よりも実用書。ビジネス書や技術書ばかり読むようになっていたからです。
知識として得られれば十分だと、同じテーマの本を3冊くらい読めば満足してしまう。いつの間にか”消費する読書”や“効率のための読書”になっていきました。
そんな時、ある人がこう教えてくれました。
「本はいろんな人生を体験させてくれるよ。人の気持ちを知るには、本を読むのが一番。必要だからとかそんなこと言ってるからつまらないんだ。」
その言葉がとても魅力的に感じて、「とにかく読みやすい簡単なものでお願いします!」とおすすめ本をリクエストしてやっと手に取った一冊。不安に思いながらの久しぶりの読書は、日常を描いた短編集でした。読むペースは正直昔よりずっと落ちていたし、眠くなるし、リハビリのように読み進めながら、行き帰りの電車の中で1年かけて大切に読みました。でもそれをきっかけに、本を読む時間は、“知識を得るため”ではなく、“心を動かすため”の時間になっていました。
ビジネス書は「わかりやすく教える」ためのもの。だから興味さえあれば誰でも読めるのかもしれません。でも文芸書は違って、ジャンルによって難易度が変わるので、今でもサスペンスや推理ものにチャレンジしては、まだ難しいなって本棚に戻し…の繰り返しです。
それでも、小さな驚きや気づきをくれる物語が、今の私には心地よく感じます。
好きな時に、好きなだけ読めばいい。全部読まなくてもいいし、途中で止めてもまたいつか開けばいい。本はいつでもそっとそばにいてくれる友人のような存在だと、改めて思いました。
気分がのらない日、天気が悪い日。
立ち止まった時に、本を思い出してみる。ページをめくるたびに、少しずつ心が動き出すかもしれません。
そんな読書の世界があると面白さに気づいたら、600円の幸せって悪くないなと、小さな幸せを噛みしめています。